ヘイゼル「猫の組曲」解説

HBE_001 資料

 クリス・ヘイゼルの「3匹の猫」と「あと1匹の猫」は、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル(以下 PJBE)の依属作品で、PJBE の代表曲として大変人気があります。そして第2のシリーズ「もう3匹の猫」はロンドン・ブラスによる委嘱作品です。
ヘイゼルは PJBE のプロデューサー、そして「猫の組曲」の作曲者として有名ですが、彼の作品は様々なジャンルにわたっており、PJBE 以外のグループや芸術家とも多くの仕事をしています。
ここでは “All-Brass-Ensemble Jeunesses Musicales World Orchestra” の CD のライナーノーツにある、ヘイゼル自身による解説(1997年10月24日)を参考に「猫の組曲」と7匹の猫についてまとめています。

「猫の組曲」

「猫の組曲」はもともと PJBE の当時のバストロンボーン奏者だったレイモンド・プレムル作曲のブルース・マーチに組み合わせる“パートナー曲”として作曲しました。 こうして私の猫の名前をつけた“ミスター・ジャムズ”が出来上がりました。 みんながこの曲を気に入って、組曲にするべきだといいました。 当時私は4匹の猫と暮らしていたので、組曲の楽章に猫たちの名前をつけることにしたのです。

クラーケン

クラーケンは最初の猫でした。 この子は捨猫として私のところにやってきて、私の手のひらで丸くなり寝てしまうほど小さかったのですが、私は冗談半分に伝説の海の怪物の名前をつけました。 彼女は成長しても小さなままでしたが、後でどの猫が家族に加わろうと、その猫がどんなに大きくても、彼女が猫のリーダーであり続けました。 彼女は他のすべての猫より長生きして、なんと20歳になりました。 彼女の堂々とした音楽は、誰がボスであるかを示しており、また彼女の挑戦的な小さなしっぽのためにもうひとつフーガが作曲されました。

ミスター・ジャムズ

ミスター・ジャムズは迷い猫でした。 彼はどこかからやってきて、ひどい状態でした。 痩せこけてフラフラしながら彼はクラーケンのえさを盗む機会をうかがっていました。 彼が私たちになれて家の中に入ってくるようになるまで数ヶ月かかりました。 この頃私たちは、彼の毛色にちなんで、“ジンジャー”という名前をつけていたのですが、どういうわけかそれから“ジャンブル”に、そしてミスター・ジャムズになったのです。 彼の荒れた過去にもかかわらず、彼はもっとも穏やかな猫でしたし、彼の音楽はそれを表しています。 ミスター・ジャムズは「猫の組曲」の中で最も人気のある曲になっています。

ブラック・サム

サムは、ある寒い雨のふる日曜の朝にやってきて、窓の前でなき続けたので、ついに私は彼を中へ入れてあげました。 彼は住み着くことに決めました。 彼は聞いた事もないとても大きな音でのどを鳴らすのですが、それはゴスペルシンガーたちの賛美歌を思い起こさせました。 それで彼の讃歌はジャズの要素が音楽の基本的な要素として組み込まれているのです。

バーリッジ

バーリッジは4匹目の猫でしたが、彼もまた放浪者でした。 彼は若くて元気いっぱいで家や庭を狂ったように走り回っていました。 私は彼に庭にあった植物の名前をつけましたが、それはその下に彼がよく隠れていた植物でした。 悲しいことに彼は自動車に轢かれてしまい、わずかの間の短い人生を終えました。

「猫の組曲」第二のシリーズ

第二のシリーズ、“あと3匹の猫”はその数年後に完成しました。 ひとつの例外を除いてすべての曲は新しくやってきた猫にちなんで名づけられています。

フローラ

フローラは小さな子猫としてゴミ箱のなかで見つかりました。 バーリッジのように彼女は、そこらじゅうを歩き回ったかと思えば突然ぴったりと止めて寝てしまうことが日常でした。 寝ていたか思えばまた起き上がりまた新たに歩き回るのです。 彼女を見つけようと思ったら、たいてい庭の茂みの中にいることが多かったのですが、そこから彼女の名前がつけられたのです。

タビー・マウストラウザー 

タビー・マウストラウザーという名前は私が自分でつけた名前だったらよかったとは思うのですが、これは私がつけたものでも、この雄猫の特徴からつけられたものでもないのです。 この名前は、PJBEの熱狂的なファンである私の友人がつけたものです。 彼は「猫の組曲」が大好きで、私は彼の友情に応えるために タビーという名前をもらったのです。 名前の由来については一度も聞いていませんが、タビー/Tubby (たるのような、太っ腹の)とマウス/Mouse(ねずみ)は説明なくともわかります。 でもトラウザー/Trouser(ズボン)は、いったいどこからきたのかはわかりません。 かれは、寝ることと食べることだけを愛する穏やかな猫でした。

ホームプライド

ホームプライドは大きな、黄銅-生姜色の猫で、ある朝キッチンで盗み食いしているところを見つけた猫でした。 最初はミスター・ジャムズが小麦粉か何かを被ったのだと思いました。 しかしそれが違う猫とわかり、私の家に新しい猫が住み着くこととなったのです。 しかし、この小麦粉のイメージがどうしても忘れられず、イギリスのベーキング関連商品の会社 “ホームプライド”の名前をつけました。 彼を従えることができたのはクラーケンだけでした。